「会議が終わっても、そこからが本番」——そんなふうに感じている経営者や担当者の方は少なくないのではないでしょうか。打ち合わせのたびに議事録をまとめ、一日の終わりには日報を書く。一つひとつは短い作業でも、毎日積み重なれば相当な時間になります。しかも、こうした事務作業は売上に直接つながりにくいため、後回しになりがちで、記憶があいまいになってから書き直す…という悪循環に陥ることもあります。
近年は、こうした「書く作業」の一部をAI(人工知能)に任せられるようになってきました。この記事では、議事録や日報の作成をAIに手伝ってもらう基本の流れと、中小企業が導入でつまずかないための注意点を、専門用語をかみ砕いて解説します。特別なIT知識がなくても取り組める内容ですので、日々の事務負担を軽くするヒントとしてお役立てください。
なぜ議事録・日報の作成に時間がかかるのか
そもそも、これらの作業に時間がかかるのはなぜでしょうか。理由を分けて考えると、どこをAIに任せればよいかが見えてきます。
- 思い出す手間:会議や一日の出来事を記憶からたどり直す作業です。時間が経つほど負担が増します。
- 要点を選ぶ手間:話した内容すべてではなく、「決まったこと」「次にやること」だけを抜き出す判断が必要です。
- 文章に整える手間:抜き出した内容を、後から読んでも分かる形に書き起こす作業です。
この3つのうち、「思い出す」「文章に整える」といった部分は、実はAIが得意とするところです。人がやるべき判断を残しつつ、機械に任せられる作業を切り分けることが、負担を減らす第一歩になります。
AIに任せる基本の流れ——4つのステップ
議事録や日報づくりをAIに手伝ってもらう場合、大まかに次の4つのステップに分けられます。全部を一度に自動化しようとせず、順番に見ていきましょう。
ステップ1:録音する
まずは、会議や打ち合わせの音声を録音します。スマートフォンの録音機能でも、オンライン会議ツールの録画機能でも構いません。日報であれば、一日の終わりに数分間、その日の出来事を声に出して吹き込んでおくという使い方もできます。書くより話すほうが早い、という方には特に向いた方法です。
なお、録音する際は、参加者に事前に一言伝えておくと安心です。相手に知らせずに記録することは、信頼関係の面でも避けたほうがよいでしょう。
ステップ2:文字起こしする
次に、録音した音声を文字に変換します。これを「文字起こし」と呼びます。以前は人が聞きながら手作業で打ち込んでいた工程ですが、近年は音声を自動でテキストにするツールが増え、精度も上がってきました。話し言葉がそのまま文章として残るため、「思い出す」手間の多くをここで省けます。
ただし、自動の文字起こしは万能ではありません。専門用語や固有名詞、複数人が同時に話す場面などでは、聞き間違いが起きることもあります。この段階ではまだ「素材」の状態だと考えておくとよいでしょう。
ステップ3:要約する
文字起こししたテキストは、そのままでは長すぎて読みにくいものです。そこで、AIに「要点をまとめてください」と指示して、短く整理してもらいます。この工程が、AIを使ううえで最も効果を実感しやすい部分かもしれません。長い会話の中から、決まったことや議論の流れを、読みやすい形に整えてくれます。
コツは、どんな形式でまとめてほしいかを具体的に伝えることです。たとえば「決定事項・保留事項・次回までの宿題の3つに分けて」といった形で指示すると、自社の議事録フォーマットに近い形で出力されやすくなります。
ステップ4:やるべきことを抜き出す
最後に、要約の中から「誰が・いつまでに・何をするか」といったタスク(やるべきこと)を抜き出します。これもAIに「この会議で発生したタスクを担当者と期限つきで一覧にしてください」と依頼すれば、箇条書きで整理してもらえます。議事録を書くこと自体が目的ではなく、その後の行動につなげることが本来の狙いですから、この工程まで含めて考えると効果が高まります。
導入でつまずかないための3つの注意点
便利な一方で、AIに任せる際にはいくつか気をつけたい点があります。トラブルを避けるためにも、次の3つは押さえておきましょう。
- 機密情報の扱いを確認する:会議には社外秘の情報が含まれることがあります。利用するツールが入力した情報をどう扱うのか、利用規約やプライバシーの方針を事前に確認しておくと安心です。取引先の個人情報など、特に慎重に扱うべき内容には注意が必要です。
- 最終チェックは人が行う:AIの出力は下書きとして考え、事実関係や固有名詞に誤りがないかを人の目で確認しましょう。特に決定事項や金額など、後で問題になりやすい部分は念入りに見直すことをおすすめします。
- 小さく始めて自社に合わせる:いきなり全社で導入するのではなく、まずは一つの会議や一人の担当者から試すと、無理なく自社のやり方に合わせていけます。
AIはあくまで作業を手伝ってくれる道具であり、判断や責任まで肩代わりしてくれるわけではありません。「任せきる」のではなく「下ごしらえを任せる」という感覚で使うと、うまく付き合いやすくなります。
まずは一つの会議から始めてみる
「難しそう」と感じる方もいるかもしれませんが、最初の一歩は決して大げさなものではありません。次のような小さな試みから始めてみてください。
- 次の社内会議を一つ録音してみる
- その音声を文字起こしツールにかけてみる
- 出てきたテキストをAIに要約してもらい、いつもの議事録と見比べる
この流れを一度体験すると、「どの工程が自社に役立ちそうか」が具体的に見えてきます。すべてを自動化する必要はありません。文字起こしだけでも助かる会社もあれば、要約とタスク抽出まで活用したい会社もあります。自社の困りごとに合わせて、必要な部分だけ取り入れていくのが、無理なく続けるコツです。業務のどこにAIを組み込めるか整理したい場合は、当社のAI業務効率化支援のページもご参考になれば幸いです。
まとめ
議事録や日報の作成は、「録音→文字起こし→要約→タスク抽出」という流れに分けることで、その一部をAIに任せやすくなります。思い出す手間や文章に整える手間を軽くできれば、担当者はより本質的な仕事に時間を使えるようになるでしょう。大切なのは、機密情報の扱いに気をつけ、最終チェックは人が行うこと、そして小さく始めて自社に合った形を見つけていくことです。まずは次の会議を一つ録音するところから、気軽に試してみてはいかがでしょうか。
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