金属リサイクル業の会社で、社長の携帯に入る電話のうち、出られなかったものを自動で「タスク」(誰かが対応すべき用件)にして、会社の公式LINEに知らせる仕組みを作りました。今は、不在着信から30秒ほどで担当者のLINEに届きます。
ただ、最初からうまく動いたわけではありません。電話会社の録音サービスを検討してやめ、導入日には通知が最大30分遅れ、翌週には記録の送信が7日間止まりました。平日の朝7時に送るはずの通知が、土曜に届いたこともあります。やった順に、判断の理由と一緒に書きます。
きっかけ:受注した日に、トラックが行かなかった
この会社では、取引先からの電話がほぼすべて社長の携帯に入ります。1日50〜60件。そのうち8割は、決まった形に当てはまらず、その場で判断が要る内容です。運転中にかかってくることも少なくありません。
実際に起きたことがあります。社長が事務の担当者に伝えるのを忘れ、受注した日にトラックが行きませんでした。ほかにも、折り返しを忘れる、同じ仕事を二重に手配する、といったことが起きていました。社長は「一定量を超えるとミスが一気に増える」と話していました。
実は、最初に持っていった提案は、請求書のチェックを自動にするものでした。社長の判断は、1回15分ほど短くなるだけなら効果は小さい、というものです。欲しいのは、会社の管理がうまく回ること。そこで優先順位を入れ替え、電話の対応漏れを防ぐことから始めました。
最初に:どこで何が動くのか
仕組みは3か所に分かれています。どこで何が起きているかを先に押さえておくと、このあとが読みやすくなります。
| 場所 | 役割 |
|---|---|
| 社長の携帯 | 着信と発信の記録を、専用のアプリがサーバーへ送る |
| サーバー | 記録を貯めて、出られなかった電話をタスクにする。折り返したら自動で完了にする |
| 会社の公式LINE | 担当者に知らせる。固定電話の用件もここから入力する |

用語は3つだけ
- 公式LINE:会社として作るLINEのアカウントです。個人のLINEとは別に届くので、仕事の知らせが家族や友人とのトークに埋もれません。
- 通話履歴:携帯が自動で残している、着信と発信の記録です。今回の仕組みは、ここを読んでいます。
- 定期実行:「15分ごと」「毎朝7時」のように、決まった時刻にサーバーが自動で動く仕組みです。後半の失敗談に関わります。
手順0:電話がどこに入っているかを分ける
最初に、電話の入り口を分けました。
| 入り口 | 割合 | 取り方 |
|---|---|---|
| 社長の携帯 | 約9割 | 自動(通話履歴を読む) |
| 事務所の固定電話 | 約1割 | 手入力(事務の担当者が入力) |
固定電話を自動にしなかったのには理由があります。この会社の固定電話は、インターネット回線を使う電話アプリで受けていて、その着信は携帯の通話履歴に残りませんでした。打ち合わせの場で、実際にかけて確かめています。自動で取るには電話機側に追加の契約が要り、費用の前提が変わります。全体の1割なので、入力する形にしました。
判断:録音サービスは使わなかった
電話の中身まで残せないかと、録音も検討しました。候補は2つで、どちらも見送っています。
1つ目は、持ち歩くタイプの録音機です。社長の答えは「無くす・壊す・電源を切り忘れる」。粉じんと重機の中で働く現場です。録れていない日がある仕組みでは、漏れのチェックには使えません。
2つ目は、電話会社の通話録音サービスです。最初は月550円と聞いていました。ところが49ページの資料を読み込むと、それは録音容量が約200分の最小の料金でした。この会社の通話量(月に約44時間)に当てはめると、月7,700円前後(税込)になります。社長には、その日のうちに訂正を伝えました。
決め手になったのは料金ではありません。録音をプログラムから取り出す口が、このサービスにはありませんでした。取り出し方は、管理画面からまとめてダウンロードすることだけです。自動でつなぐには専用の回線と常に動かしておくサーバーが要り、10人ほどの会社には大がかりすぎます。
そこで録音はいったん脇に置き、「出られなかった電話を、誰かが必ず拾う」ことだけに絞りました。
手順1【社長の携帯】着信の記録を送るアプリを入れる
社長の携帯はAndroidです。着信と発信の記録を読んで、サーバーへ送る小さなアプリを作りました。アプリストアには出さず、社長の携帯に直接入れています。
入れるときに決めたことは3つです。
- 過去の履歴は送らない。入れた時点から後の分だけを送ります。
- 電話帳の名前を送るかどうかは、社長が決める。名前がわかると便利ですが、電話帳の全件がサーバーに上がるためです。
- 電池の節約の対象から外す。外さないと、携帯がアプリを止めてしまいます。
手順2【サーバー】不在着信だけをタスクにする
最初は、出た電話もタスクにしていました。運用を始める前日に見直して、出られなかった電話だけをタスクにする形に変えています。出た電話まで並ぶと、本当に対応が要るものが埋もれるからです。出た電話は「出た電話」という欄に参考として残し、フォローが要るものだけ手でタスクにできます。
サーバー側で動いているのは次の4つです。
- 折り返したら自動で完了:不在着信の相手に社長が電話をかけると、その記録を見てタスクを閉じます。手で「完了」を押す手間が減り、残ったものが本当の未対応になります。
- 15分ごとのまとめ通知:1件ごとに1通は送りません。知らせが多すぎると、誰も見なくなるからです。通数を抑える意味もあります。
- 17時と翌朝7時の未対応まとめ:その日のうちに片づかなかったものを、もう一度知らせます。
- 止まっていないかの見張り:携帯から60分通信がなければ、LINEに警告を出します。
手順3【公式LINE】知らせを受ける・固定電話の用件を入れる
公式LINEのメニューから、電話メモとタスクの一覧を開けます。

固定電話で受けた用件は、事務の担当者が「電話メモ」から入れます。項目は相手・用件・急ぎかどうか・メモの4つだけです。これ以上は増やしませんでした。増やすと入力されなくなるからです。相手の欄は、取引先の一覧(約1,300件)から候補が出ます。
通知の宛先は、導入の翌日に変えました。最初は全員に届く形でしたが、社長から「全員に通知は微妙」と言われたためです。今は、担当者が決まったタスクは本人にだけ届き、担当者がいないものは全員に届きます。
つまずき1:導入日、通知が最大30分遅れた
導入日に、社長の携帯でテストしました。14時53分の着信が、15時15分に4人のLINEに届きました。折り返しの自動完了も、実際の携帯で動いています。
ところが、その場で問題になりました。15時5分にかかってきた電話が、15時9分になってもLINEに来ません。原因は、待ち時間が2段になっていたことです。携帯のアプリが送るのが15分ごと、サーバーがまとめて知らせるのも15分ごと。重なると最大30分遅れます。
その日のうちに2か所を直しました。
- 携帯:通話が終わって8秒後に、記録を送る。
- サーバー:記録を受け取った時点で、まだ知らせていないものがあれば、すぐ知らせる。

1週間後に測り直すと、16時15分12秒の着信が、16時15分40秒に社長のLINEに届きました。28秒です。
つまずき2:記録の送信が7日間止まった
導入から3日後の朝、見張りの警告が届きました。社長の携帯から、9月4日15時56分を最後に記録が来ていません。ちょうど、遅れを直した新しいアプリを入れた直後です。
原因は1つに絞り切れていません。有力だったのは次の2つです。
- アプリを新しくしたあと、一度開くまで動かない。
- 入れ直すと、サーバーにつなぐための合言葉(APIキー)が消える。
社長は忙しく、すぐには携帯を触れません。そのあいだに見張りの穴も見つかりました。警告は最初の1回で黙る作りになっていて、止まったままでも2日目からは知らせが来ませんでした。止まっている間は毎朝警告する形に直しています。
アプリも作り直しました。開いただけで送信する。「今すぐ同期」のボタンを押すと、その場で送って結果を画面に出す。携帯の状態(アプリの版・電池の設定・前回の結果)をサーバーに送り、離れていても原因が見えるようにする。
完全に戻ったのは9月11日の16時15分です。7日間止まっていました。止まっていた間の着信は、アプリが動き出したときに携帯の履歴からまとめて取り込む作りです(入れ直した場合は、入れ直した後の分だけ)。
戻すときには、Androidの設定も3つ見直しました。場所は「設定 → アプリ → 着信を送るアプリ」です。画面に出てくる「バックグラウンド」は、アプリを閉じていても裏で動けるようにする設定のことです。
- 「使用していないアプリを管理する」をオフ
- 「モバイルデータとWi-Fi」で、バックグラウンドデータをオン、モバイルデータの無制限利用をオン
- 「アプリのバッテリー使用量」で、バックグラウンドでの使用を許可(制限なし)
つまずき3:平日朝7時の通知が、土曜に届いた
9月12日の土曜の朝7時に、平日だけのはずの通知が届きました。調べると、月曜の朝7時の通知は逆に届かない設定になっていました。
原因は、定期実行が世界標準時で動いていたことです。日本時間は世界標準時より9時間進んでいます。日本の月曜朝7時は、世界標準時では日曜の22時です。「月〜金の22時(世界標準時)」と指定すると、日本時間では火曜から土曜の朝7時に動きます。

直し方は、曜日の指定をやめることでした。毎日動かし、送るかどうかはプログラムの中で日本時間の曜日と祝日を見て決めます。
変更前の設定です(左から分・時・日・月・曜日。時刻は世界標準時)。
crons = ["*/15 23-8 * * mon-fri", "0 8,22 * * mon-fri", "*/30 * * * *"]
変更後は曜日の指定を外し、日本時間の土日と祝日はプログラムの中で送らずに終えます。
crons = ["*/15 23-8 * * *", "0 8,22 * * *", "*/30 * * * *"]
土日祝は、朝7時と17時の定時通知をすべて止めました。
つまずき早見表
| 起きたこと | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 通知が最大30分遅れる | 携帯の送信15分とサーバーのまとめ15分が重なった | 通話終了の8秒後に送信。受け取ったらすぐ通知 |
| 記録が届かなくなる | アプリ更新後に開いていない。入れ直しで合言葉が消えた(有力) | 開くだけで送信する作りに。更新後はその場で「今すぐ同期」まで確認 |
| 止まっているのに2日目から警告が来ない | 警告が最初の1回で黙る作り | 止まっている間は毎朝警告 |
| 平日朝の通知が土曜に届き、月曜に届かない | 定期実行の曜日が世界標準時 | 毎日動かし、日本時間の曜日と祝日で判断 |
| 固定電話の着信が取れない | インターネット回線の電話アプリは通話履歴に残らない | 電話メモから手入力 |
| 出た電話まで並んで見づらい | すべての着信をタスクにしていた | 不在着信だけをタスクに |
確認方法
- テストで電話をかけ、出ずに切る。30秒ほどで担当者のLINEに届けば動いています。
- その番号に折り返しの電話をかけ、タスクが自動で完了になるかを見る。
- 見張りの警告が来たら、携帯でアプリを開いて「今すぐ同期」を押し、「結果:OK」と出るかを確かめる。
電話のあとに広がったもの
電話が回り始めると、同じLINEのメニューに仕事が集まってきました。今は次のものも、同じ公式LINEから使っています。
- 配車表:日・週・2週・月で表示を切り替えます。日程が決まっていない依頼は「保留」に入れ、毎朝知らせます。社長によると、配車漏れの主な原因はこの日程未定の依頼でした。
- 印刷:紙の予定表と同じ形で印刷します。
- 業務日報:配車表から取り込み、紙と同じ様式でExcelに出します。
- 社員教育:毎朝届く問題で、仕事の知識を覚えます。
画面と機能の一覧はLINE業務管理システムのページにまとめています。
費用について
- サーバーは無料枠の範囲で動いています。想定の利用は1日1,000件未満で、無料枠(1日10万件)に対して十分な余裕があります。
- LINE公式アカウントは、無料プラン(月200通)では足りませんでした。見込みが月2,600通だったため、導入日にライトプラン(月5,000通・月5,500円税込)に変えています。
- 構築と運用の費用は、LINEに載せる業務の範囲で変わります。
正直に書いておくこと
- 着信を自動で取れるのはAndroidだけです。iPhoneは、ほかのアプリから通話履歴を読めません。
- 携帯のアプリが止まっている間は、着信を取れません。今回は、見張りが気づいてから戻るまでに4日かかりました。人が携帯を触らないと直せない場面があります。
- 取り込むのは平日8時〜17時の着信だけです。社長の携帯なので、その時間の私用の電話も混ざります(社長の了解を得ています)。
- 固定電話は手入力です。入れ忘れれば漏れます。
- 電話の中身(録音)はまだ取っていません。わかるのは「誰から、いつ」までです。
- 担当者を決めただけでは完了になりません。「完了」を押すまで、翌朝のまとめに出続けます。
要点
- 電話の取りこぼしは、全部を記録するより「出られなかった電話を誰が拾うか」に絞ると、仕組みにしやすい。
- 知らせは1件ずつ送らず、まとめる。宛先は担当者に絞る。
- 止まったことに気づく見張りと、時刻・曜日の扱いは、最初から疑っておく。
電話の取りこぼしや、紙とExcelの転記で困っている会社向けに、同じ仕組みを業務に合わせて作っています。画面と費用の目安はLINE業務管理システムのページをご覧ください。