当社はLINEを使った仕組みを2種類作っています。1つは、整体院のLINE予約のような「お客さま向け」の仕組み。もう1つは、金属リサイクル業の会社の電話メモや配車表のような「社内向け」の仕組みです。
どちらを会社の柱にするか。一度は片方に絞りかけました。
最終的には、両方を「LINE活用」という1つの窓口で受けることにしています。決め手は、1つの公式LINEの中でお客さま向けと社内向けが実際につながった場面を、すでに作っていたことでした。
判断の理由と、1つのアカウントで両方を使うときに実際に決めたことを、順に書きます。
きっかけ:片方に絞るべきか迷った
2つの仕組みは、作り方がまったく違います。
| お客さま向け | 社内向け | |
|---|---|---|
| 主な中身 | あいさつの自動送信、絞り込んだお知らせ、予約とリマインド | 電話メモ、タスク、配車表、日報、社員教育 |
| 作り方 | 公開されている仕組み(オープンソース)を土台に、店ごとに設定する | 会社の業務に合わせて、1社ずつ一から作る |
| 目安の費用(税別) | 予約の場合 構築費25万円〜、環境維持費 月5,000円〜 | 構築費30万円〜、運用費 月2万円〜 |

お客さま向けの土台にしているのは、設計図が公開されていて誰でも使える仕組み(オープンソースと呼びます)です。便利な反面、元の開発者の方針が変われば影響を受けます。一方で社内向けは、電話・配車・日報とできることが増え、形が見えてきていました。
社内の仕事の相談相手として使っているAI(Claude)にも、この迷いをそのまま相談しました。返ってきた提案は「新しく売り込むのは社内向けに集中し、お客さま向けは今のお客さまの保守を中心にする」。筋は通っています。
それでも、絞らないことにしました。
絞らなかった理由は3つ
1つ目は、頼む側からの見え方です。 「予約しかできない会社」「業務管理しかできない会社」より、「LINEのことなら、お客さま向けも社内向けも相談できる会社」のほうが声をかけやすい。相談に来る方は、自分の困りごとが予約の話なのか、社内の話なのかを最初から分けて考えてはいません。
2つ目は、同じ公式LINEの中で両方が要る場面が、実際にあったことです。 金属リサイクル業の会社では、お客さまからLINEで届いた問い合わせが、そのまま社内の「未対応リスト」に入るようにしています。お客さま向けの入口と社内向けの仕組みが同じアカウントにあるから、やりとりが途切れません。
3つ目は、片方から始めて、あとから足せることです。 入口を2つ持っておけば、どちらの困りごとから来た相談も受けられます。予約から始めた店が、あとでスタッフのシフトや日報もLINEに載せる。その逆もできます。

用語は3つだけ
- 公式LINE:会社や店として作るLINEのアカウントです(正式にはLINE公式アカウント)。個人のLINEとは別に届きます。
- リッチメニュー:トーク画面の下に出る、ボタンの並びです。「予約する」「電話する」などを押すと、それぞれの画面が開きます。
- 受け渡し先:公式LINEに届いたメッセージを、外の仕組みに渡す先です(Webhookと呼びます)。別の配信ツールから切り替えるときに関わります。
手順0:今の公式LINEで何をしているかを書き出す
最初に、今の使い方を書き出します。ここが曖昧なまま始めると、「誰に何が見えているか」が分からなくなります。
| 確認すること | 書き出す例 |
|---|---|
| 誰が友だちになっているか | お客さまだけ/社員も入っている |
| 何を送っているか | 月1回のお知らせ、予約の確認 |
| つながっているツール | 予約サイト、別の配信ツール |
| 月に送っている通数 | 公式LINEの管理画面で確認できる |
| 困っていること | 予約の電話に出られない、電話の用件が伝わらない |
最後の「困っていること」が、お客さま向けと社内向けのどちらから始めるかを決めます。
手順1:見る人ごとに、出るメニューを分ける
金属リサイクル業の会社では、同じ公式LINEに3種類のメニューを用意しました。
| 見る人 | メニューの中身 | 付け方 |
|---|---|---|
| お客さま | ホームページ/電話する/お問い合わせ | 何もしなくても全員に出る |
| 社員 | 電話メモ/タスク一覧/配車表 など | 一人ずつ付ける |
| ドライバー | 配車表を見る(書き換えはできない)/事務所に電話 | 一人ずつ付ける |

まず、何もしていない人にはお客さま用のメニューが出るようにしておきます。新しく友だちになった人は、まずお客さまとして扱われます。社員やドライバーには、一人ずつ別のメニューを付けます。
ここで決めたのが、社員に切り替えるときは「社内の画面を使える権限」と「メニューの付け替え」を1回の操作でまとめて行う、ということです。片方だけ変えると、社員なのにお客さま用のメニューが出る、メニューは社内用なのに画面を開くと断られる、といったずれが起きます。

手順2:お客さまからのメッセージを、社内のタスクにする
公式LINEに届いたお客さまのメッセージは、社内の未対応リストに自動で入るようにしました。社員は自分のLINEでリストを見て対応し、終わったら「完了」を押します。
作ってみて、決めておく必要があったことが2つあります。
- 社員とドライバーのメッセージは入れない。 同じ公式LINEで社員同士も連絡を取るので、全部入れると未対応リストが社内の連絡で埋まります。
- 同じお客さまが続けて送ったら、1件にまとめる。 「すみません」「さっきの件ですが」と分けて送る方は多いので、1通ずつタスクにすると同じ用件が並びます。2通目からは、最初のタスクにメモとして足しています。
手順3:送れる通数を先に見積もる
公式LINEは、送るメッセージの数(通数)で料金が変わります。無料プランで送れるのは月200通までです。
社内向けの仕組みは、担当者への知らせやリマインドで思った以上に通数を使います。金属リサイクル業の会社では、1件ずつ送らずに15分ごとにまとめて知らせる形にしました。それでも見込みは月2,600通で、無料プランでは足りないため有料のライトプランに切り替えています。電話の仕組みそのものを作った経緯は、別の記事に書いています。
お客さま向けの配信と社内向けの知らせを同じアカウントで送る場合は、両方を足した通数で考えます。
手順4:別の配信ツールから切り替えるときに確かめたこと
Lステップやエルメのような配信ツールを使っていても、同じ公式LINEのまま切り替えられます。あるお店で、別の配信ツールから当社の予約の仕組みへ切り替えたときに確かめたことを書きます。
- 受け渡し先は1つしか設定できない。 新しい仕組みに向けた時点で、前のツールはメッセージを受け取らなくなります。2つの仕組みが同時に反応することはありません。
- 友だちは公式LINEに残る。 友だちのつながりはアカウント側にあるので、切り替えても消えません。
- 前のツールが作ったものは残る。 前のツールで設定したリッチメニューと、日時を指定して予約しておいた配信は、切り替えただけでは消えません。先に止めるか、置き換えます。
- 無料プランなら、解約しても費用は減らない。 このお店は前のツールを無料プランで使っていたので、費用を下げる目的では切り替えていません。目的は、動いていなかった予約の受付を動かすことでした。
切り替えの理由を「費用」ではなく「何を動かしたいか」で決めておくと、切り替えたあとに「思っていたのと違う」となりにくくなります。
当社のサイトも組み替えた
当社のサイトには、社内向けの「LINE業務管理システム」と、お客さま向けの「LINE予約システム」の説明ページが、それぞれ別にありました。足りなかったのは、その2つをまとめて「どちらに困っているか」から選べる入口です。お知らせの配信の説明も、どこにもありませんでした。
そこで入口として「LINE活用支援」のページを作り、2つのページをその下に並べ直しました。入口のページでは、お客さま向けと社内向けを並べたうえで、「どちらから始めればいいか」を困りごとから選べるようにしています。
つまずき早見表
| 起きること | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 社員なのに、お客さま用のメニューが出る | 一人ずつのメニューが付いていない | 社員に切り替える操作で、メニューも付け替える |
| 未対応リストが社内の連絡で埋まる | 社員のメッセージも入る設定になっている | 社員・ドライバーは入れない設定にする |
| 同じ用件のタスクが何件も並ぶ | 1通ずつタスクにしている | 同じお客さまの続けての送信は1件にまとめる |
| 月の途中でメッセージが送れなくなる | 無料プランの月200通を超えた | まとめて送る形にする、または有料プランへ |
| 切り替えたのに、前のツールのメニューが出る | 前のツールが設定したメニューが残っている | 前のメニューを消すか、新しいものに置き換える |
| 切り替えたあとに、前のツールから配信が届く | 日時指定の配信が残っていた | 切り替える前に、前のツールの予約配信を止める |
確認方法
- 3つの立場のスマホで開く。 お客さま・社員・ドライバーのそれぞれのスマホで公式LINEを開き、出るメニューが想定どおりかを見ます。自分のスマホだけで確かめると、社員用のメニューしか見えません。
- テストで1通送る。 お客さまの立場でメッセージを送り、未対応リストに入るか、社員の立場で送って入らないかを確かめます。
- 月の通数を見る。 公式LINEの管理画面で、その月に送った通数を確認します。使い始めの1か月は、週に1回見ておくと安心です。
正直に書いておくこと
- 両方を一度に作る必要はありません。 むしろ、今いちばん困っているほうから始めるのをおすすめしています。
- 社内向けは1社ずつ作るので、費用は一律ではありません。 LINEに載せる業務の数や画面の数で変わります。
- お客さま向けの予約は、オープンソースの仕組みを土台にしています。 元の開発者の方針が変わる可能性があるぶん、構築と運用は当社が責任を持って受け持ちます。構築で詰まったところはこちらの記事にまとめています。
- LINEを使わない社員がいる場合は、別の入口が要ります。 事務所のパソコンから見られる画面や、印刷できる形を合わせて用意しています。
- 公式LINEの利用料は、別にかかります。 月額料金と通数の費用は、使う会社のご負担です。
要点
- LINEの使い道は「お客さま向け(配信・予約)」と「社内向け(業務管理)」の2つ。1つの公式LINEで両方を持てる
- 両方を持つときは、見る人ごとにメニューを分け、お客さまのメッセージだけを社内のタスクにする
- 通数は両方を足して見積もる。別のツールからの切り替えは、友だちを残したまま同じアカウントでできる
お客さま向けと社内向けのどちらが合うか分からない段階でも、ご相談いただけます。LINE活用支援のページで、2つの使い方と費用の目安をまとめています。