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メールサーバー移行後に「迷惑メールが増えた」と言われた話

2026年9月25日
約15分で読めます
山田 祐輔
メールサーバー移行後に「迷惑メールが増えた」と言われた話

会社のメールを、別のレンタルサーバーへ移す作業をしました。利用者は29人、メールの総量は17GB。切り替えそのものは、朝9時から1時間ほどで終わります。

本当の仕事は、そのあとに始まりました。

切り替えから2日後、窓口の担当者の方を通して、社内から申告が届きます。

  • 移行してから迷惑メールが増えた
  • 取引先から「あなたのアドレスで迷惑メールが届いている」と言われた
  • ホームページの問い合わせメールが、迷惑メールに振り分けられる
  • 朝に読んだはずのメールが、夕方また未読で戻ってくる

4件とも、原因は別々でした。そして2件は、移管作業そのものが引き起こしていました。

この記事は、その4件をどう切り分けて、何をしたかの記録です。メールの移管をこれから頼む方が、何が起きるかを先に知っておくための材料にしてください。

最初に:作業する場所は3つある

メールの移管でいちばん混乱するのは、「いま、どこで操作しているのか」です。場所は3つあります。

  • 移す前のサーバーの管理画面。これまでメールを受けていた場所です
  • 移す先のサーバーの管理画面。新しくメールを受ける場所です
  • 住所録。「このドメイン宛のメールは、どのサーバーへ届けるか」を世界中に教えている台帳です。専門的にはDNSと呼びます

ここに落とし穴があります。住所録は、どちらか一方の管理画面だけが本物です。

今回のケースでは、新しいサーバーの管理画面にも「住所録の編集」というページがありました。開くと、それらしい内容がずらりと並んでいます。ところが実際に世界中が見ているのは、古いサーバー側の住所録でした。両方の中身を実際に取り寄せて比べると、値が違っていました。新しい側の画面は、誰にも参照されていなかったのです。

もし気づかずに新しい側を直していたら、「設定したのに何も変わらない」で何時間も溶かしていました。作業前に、どちらが本物かを必ず確かめてください。

覚える言葉は3つだけ

この先の話に必要な言葉は3つです。

  • メールの受け取り方が2種類ある。パソコンに丸ごとダウンロードして、サーバーからは消す方式(POPと呼びます)と、サーバーに置いたまま見に行く方式(IMAPと呼びます)です。この違いが、あとで効いてきます
  • 電子署名。「このメールは確かにこの会社のサーバーから出ました」という封蝋のようなものです。受け取った側は、これを見て本物かどうかを判断します(DKIMと呼びます)
  • なりすまし対策。「うちの名前を騙るメールが来たら、こう扱ってください」と受信側に宣言しておく仕組みです(DMARCと呼びます)。何もしない、迷惑メールに入れる、受け取らない、の3段階があります

手順0:メールの「配送記録」を見る

【どこで確認するか】届いたメールそのもの

迷惑メールの相談は、推測で答えると必ず外します。実物を見ます。

メールには、本文のほかに「どこを通って届いたか」の記録が付いています。Gmailなら、該当のメールを開いて右上の「⋮」から「メッセージのソースを表示」で見られます。Outlookなら、メールを開いて「ファイル」→「プロパティ」です。

見るのは、記録のいちばん下の行です。そこに最初に受け付けたサーバーが書かれています。

記録にある言葉意味
ESMTPA(末尾にA)ログインして送信された。つまり本当にその人のアカウントから出ている
ESMTP(Aが無い)+見知らぬIPアドレス(送信元の住所)ログインなしで外から投げ込まれた。差出人の欄を書き換えただけの偽物

この1文字の違いが、「乗っ取られたのか」「名前を騙られただけか」の分かれ目です。今回の申告は、すべて後者でした。

申告1:移行してから迷惑メールが増えた

【どこで確認するか】新旧それぞれのサーバーに残っているメール

届いていたのは「ご利用のアカウントでメール送信が確認されています」という件名のメールでした。自分のアドレスから自分宛てに届くので、乗っ取られたように見えます。

配送記録を見ると、海外のサーバーからログインなしで投げ込まれたものでした。乗っ取りではありません。

次に「本当に増えたのか」を数えました。移行の3日前から、毎日4〜7通が届いていました。増えてはいません。

ではなぜ増えたように見えたのか。原因はこちらにありました。

メールの移管では、切り替えのあとも数日は古いサーバーに何通か届きます。世界中の住所録が入れ替わるまでに時間差があるためです。取りこぼしは許されません。そこで30分おきに、古いサーバーから新しいサーバーへメールを運ぶ仕組みを動かしていました。

この仕組みが、偽メールも律儀に運んでいました。本来なら古いサーバーの中で止まっていたはずのものを、わざわざ新しい受信トレイまで届けていたわけです。

対処は簡単でした。運ぶ対象から「差出人が偽装されているメール」を外します。

申告2:取引先に、自分のアドレスで迷惑メールが届いている

【どこで確認するか】相手から転送してもらったメールの配送記録

申告1と同じ手口です。差出人の欄だけを書き換えて、世界中のあちこちから送られています。送っている側は、その会社のサーバーにも、担当者のパソコンにも触れていません。

この種類の偽メールは、こちらのサーバーをいくら守っても止まりません。止められるのは受け取る側だけです。だから「うちの名前を騙るメールが来たら、こう扱ってください」と宣言しておく必要があります。これが、さきほどの3つめの言葉、なりすまし対策です。

ただし、これを強めるのは移管作業の最後にします。理由は後述します。

申告3:問い合わせフォームのメールが迷惑メールに入る

【どこで確認するか】届いた通知メールの配送記録と、電子署名の有無

これは完全にこちらが原因でした。

電子署名は、新旧のサーバーで同じ名前の鍵を使う仕様になっていました。同じ名前は2つ登録できません。そこで新しい鍵を入れるために、古いサーバー側の署名を止めました。

ところが、ホームページはまだ古いサーバーにありました。問い合わせフォームの通知メールも、古いサーバーから送られています。署名を止めたことで、フォームの通知だけが封蝋の無い手紙になったわけです。差出人は会社のアドレス、でも署名は無い。受け取る側から見れば、偽物と区別がつきません。

対処は、フォームの送信経路を変えることでした。それまでは、ホームページが置かれているサーバーの機能でそのまま送っていました。これを、新しいメールサーバーにログインして送る方式に切り替えます。通知に署名が戻りました。

設定を入れる場所は1か所にまとめ、ブラウザから開けない場所に置きました。ホームページ側は、その設定を読んで送るだけにします。設定ファイルの名前を変えれば元の方式に戻るので、うまくいかなければすぐ引き返せます。

切り替えたあとテスト送信をして、通知に署名が付いていること、宛先の受信トレイに届くことを確認しました。

申告4:読んだはずのメールが、また未読で戻ってくる

【どこで確認するか】その人のメールボックスの中身

これも、こちらが原因でした。しかも、ある条件の人にだけ起きます。

申告してきた方は、届いたメールをフォルダに自動で振り分けて使っていました。受信トレイに残さず、すぐ別のフォルダへ移す設定です。

ここに、30分おきの引き継ぎが噛み合います。

  • 引き継ぎが、古いサーバーのメールを新しい受信トレイに入れる
  • 振り分けの設定が、それを別のフォルダへ移す
  • 30分後、引き継ぎが受信トレイを見る。さきほどのメールが無い
  • 「まだ運んでいない」と判断して、もう一度入れる

これが延々と繰り返されていました。2日足らずで565通の重複です。本人から見れば、朝に処理したメールが夕方また未読で現れる、という現象になります。

この現象が起きたのは、29人のうちこの1人だけでした。他の方はメールをパソコンに丸ごとダウンロードする方式で、サーバー側の受信トレイをいじりません。サーバーに置いたまま整理する方式の人だけが、この状態になります。

対処は、その人を引き継ぎの対象から外すこと。すでに全員分のメールは運び終えていたので、外しても問題はありません。

教訓は「引き継ぎの運搬数が毎回ゼロに落ちているかを、人ごとに見る」です。ゼロに落ちない人がいたら、その人はメールを動かしています。合計だけ見ていると気づけません。

なりすまし対策を強める前に、必ず見るもの

申告2への対処として、最後になりすまし対策を強めます。ただし、いきなり強めてはいけません。

この仕組みには、集計レポートを毎日送ってもらう機能があります。「誰が、どこから、あなたの会社の名前でメールを送ったか」が全部載っています。強める前に、まずこれを読みます。

今回、1週間分のレポートには1,751通が記録され、そのうち1,272通が「不合格」でした。不合格のまま強めると、この1,272通が相手に届かなくなります。

中身を調べると、大半は偽メールではありませんでした。取引先10社が、この会社から届いたメールを社内の別アドレスへ自動転送していた分です。

メールは転送されると、封蝋が壊れます。転送した会社が自分の名前で封をし直しますが、それは元の差出人の会社名とは一致しません。だから機械的には不合格になります。送る側では直せない性質のものです。

そこで、対策は3段階のうち真ん中で止めました。

段階相手側での扱い転送されたメールはどうなるか
何もしないそのまま受信トレイ届く(偽メールも届く)
迷惑メールに入れる迷惑メールフォルダへ消えない。気づけば拾える
受け取らない拒否消える。気づけない

「受け取らない」まで上げれば偽メールは確実に止まりますが、取引先の転送も一緒に消えます。消えたことに誰も気づけないのが怖いところです。真ん中なら、迷惑メールフォルダを見れば拾えます。

また、年末にメール配信サービスを使う予定があったので、そのサービスが使っているアドレスだけは対象から外しました。年賀状の案内が全部止まる事故を避けるためです。

住所録の変更が世界中に行き渡るまでは、30分ほどかかりました。

つまずき早見表

起きたこと原因対処
設定を直したのに何も変わらない参照されていない側の管理画面を編集していたどちらの住所録が本物かを、実際に値を取り寄せて確かめる
移行後に迷惑メールが増えたと言われる引き継ぎの仕組みが、古いサーバーの迷惑メールも運んでいる運ぶ対象から偽装メールを外す
フォームの通知が迷惑メール扱いになる古いサーバーの電子署名を止めたため、署名が消えたフォームの送信を新しいサーバー経由に切り替える
同じメールが何度も受信トレイに戻るサーバーに置いたまま整理する方式の人に、引き継ぎが繰り返し入れているその人を引き継ぎの対象から外す
偽メールを転送してもらい、返信したらエラーで戻る引用部分に偽メールの本文とリンクが入り、送信側の検査に引っかかった返信ではなく、引用なしの新規メールで返す

最後の行は、実際に起きて肝を冷やしました。お客様からの申告に返信したところ、12秒後にエラーで戻ってきて、宛先の誰にも届いていませんでした。止めていたのは相手のサーバーではなく、こちら側の送信検査です。引用に含まれていた偽メールの本文とリンクが原因でした。件名を変えて、引用なしで送り直して解決しています。

終わったかどうかの確かめ方

移管が本当に終わったかは、次の3つで判断できます。

  • 古いサーバーから出ていくメールがゼロになっているか。メールソフトだけでなく、複合機のスキャン送信、ホームページのフォーム、配信サービスまで含めて洗い出します。1つでも残っていると、そこだけ署名の無いメールが出続けます
  • 古いサーバーのメールアカウントを全部消したか。残しておくと、同じ会社のサーバー内で送られたメールが古い箱に落ちてしまい、誰も気づきません
  • 新しいサーバーに、過去のメールが全部入っているか。消す前に、古い側と新しい側でメールを1通ずつ突き合わせて確かめます。今回は最後の照合で12通の差が出ましたが、全部が偽メールで、正規のメールの取りこぼしはゼロでした

正直に書いておくこと

  • 偽メールはゼロにはなりません。なりすまし対策が効くのは、それを尊重する受信側だけです。相手のサーバー次第で、すり抜けるものは残ります
  • 社内に届く分が止まるかは、使っているサーバー次第です。自分の宣言を、自分のサーバーが尊重するとは限りません。ここは数えて確かめます。設定した翌日に、実際に迷惑メールフォルダへ入るようになったかを見ます
  • 移管の作業量は、メールの容量では測れません。今回、17GBのコピー自体は1日半で終わっています。時間を食ったのは別の部分でした。利用者一人ひとりの設定変更、メールソフト以外の送信元の洗い出し、そして移管後に届く「何かおかしい」への切り分けです
  • 無料の移転代行にメールは含まれません。サーバー会社の移転代行はホームページのデータが対象で、メールは範囲外です。頼める部分と自分でやる部分を、見積もりの前に分けておくことをおすすめします

要点

  • 移管後の「迷惑メールが増えた」は、まず配送記録を見る。増えたのか、運んでいるのかで対処が正反対になる
  • メールソフト以外の送信元(複合機・フォーム・配信サービス)を先に洗い出す。ここを残すと、そこだけ迷惑メール扱いになる
  • なりすまし対策を強める前に、集計レポートで取引先の転送を確認する。いきなり最強にすると、届かなくなったことに誰も気づけない
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山田 祐輔
YUSUKE YAMADA
代表取締役 / Web制作・AI業務効率化
30社+
支援実績
4年
事業歴
1000万
最大月商達成
10日
最速成果達成
大阪府枚方市を拠点に、中小企業・個人事業主・スタートアップの「集客」と「採用」を仕組みから支援。2022年の個人開業を経て2024年1月に法人化。ホームページ制作・EC構築・LP制作からWeb広告運用・採用支援・業務効率化まで一気通貫で対応。
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