水道修理会社のGoogle広告を運用しています。2026年6月まで、1件の問い合わせ(電話)を約7,000円で取れていました。それが7月に入って、1件41,578円になりました。約6倍です。
原因を追うと、Google広告の「最適化案の自動適用」という設定がオンになっていて、6月11日に81個のキーワードが勝手に追加されていました。この記事は、その事故と、止血したあとに自分が打った応急処置が裏目に出た話、そして11月に再開するときに立ち上げ方を変えた記録です。
広告を代理店や自社で回している方が、今日アカウントを開いて確認できる設定を3つ、最後にまとめます。
きっかけ
このアカウントは、夜間の「水道 つまり」「水漏れ」といった検索に広告を出し、電話で受注する作りです。成果は電話ボタンのタップ数で数えています。
健全なときの数字は次のとおりでした。
| 指標 | 2026年6月(健全時) |
|---|---|
| 問い合わせ(電話)数 | 41件/月 |
| クリックが問い合わせになる率 | 約18% |
| 1件あたりの獲得単価 | 7,397円 |
| 1クリックの単価 | 1,330円 |
7月に入って、同じ日予算のまま、問い合わせがぱたりと止まりました。7月17日時点で4件。獲得単価は41,578円でした。
最初に:Google広告の「自動適用」とは何か
Google広告には「最適化案」という機能があります。「このキーワードを追加しましょう」「この広告文を足しましょう」と、Googleが提案してくれるものです。提案だけなら便利です。
問題は、その提案を人が確認せずに自動で反映する設定があることです。これが「自動適用」です。種類は21種類あり、1つずつオン・オフを選べます。このアカウントでは、「キーワードの追加」を含む複数がオンになっていました。
用語は3つだけ
- キーワード:どんな検索語で広告を出すかの指定です。「水道 つまり」など。
- マッチタイプ:キーワードをどこまで広く解釈するかの設定です。狭いほうから「完全一致」「フレーズ一致」、いちばん広い「インテントマッチ」があります。広いほど、関係の薄い検索にも広告が出ます。
- 入札戦略:Googleに「何を最優先に広告を出すか」を伝える設定です。「クリック数を増やす」「問い合わせ数を増やす」など。
手順0:何が起きていたかを調べる【Google広告の変更履歴】

Google広告には「変更履歴」という画面があり、誰が・いつ・何を変えたかが残ります。ここを6月まで遡って見ました。
| 日付 | 変更 | 件数 |
|---|---|---|
| 6月11日 | キーワード追加(自動適用) | 81件 |
| 6月12日 | キーワード追加(自動適用) | 1件 |
| 7月4日 | キーワード追加(自動適用) | 3件 |
追加されたのは、いずれも「インテントマッチ」という、いちばん広い解釈のキーワードでした。たとえば「水のトラブル」のような、修理の依頼とは限らない検索語です。
結果、7月頭は広告費の8割超が、問い合わせにつながらないクリックに消えていました。クリックが問い合わせになる率は18%から2%に落ちました。
もう1つ、見逃せない副作用がありました。関係の薄いクリックが増えたことで、主力キーワード「水道 つまり」の品質評価が下がり、1クリックの単価が2,009円に上がっていました。健全時の1.5倍です。
手順1:止血する【Google広告の管理画面】
7月7日に、次の3つをやりました。
- 自動適用の21種類を、すべてオフにする
- 6月11日・12日・7月4日に自動追加されたキーワードを、変更履歴から全部取り消す
- 関係の薄いクリックを集めていた「水のトラブル」系の広いキーワードを一時停止する
ここまでは正しい止血でした。問題はこのあとです。
手順2:応急処置が裏目に出る【入札戦略】
止血と同時に、「とにかく無駄なクリックを減らしたい」と考えて、入札戦略を「問い合わせ数の最大化」から「クリック数の最大化(1クリック上限1,000円)」に変えていました。
これが裏目に出ました。7月8日から17日までの10日間、問い合わせは2件のまま。クリックは1日14回から19回に増えたのに、問い合わせは増えませんでした。
理由はあとから分かりました。「クリック数の最大化」は、問い合わせになるかどうかを一切見ずに、安いクリックを集める設定です。無駄を減らすつもりで、無駄を買いに行く設定にしていたことになります。さらに、手順1の3で止めた広いキーワードは、年間で169件の問い合わせを運んでいた主力でもありました。止めたことで、母数そのものが枯れていました。
7月17日に、入札戦略を「問い合わせ数の最大化」に戻し、主力キーワードを少額で再開しました。それでも7月の数字は戻り切らず、8月にいったん広告を止める判断をしました。
手順3:もう1つの教訓、「何を成果に数えるか」
この案件では以前、LINEの友だち追加も成果に数えていた時期がありました。
すると、Googleは「安く取れる成果」を優先します。LINEのタップは電話より気軽なので、安く大量に取れます。結果、広告はLINEのタップばかりを追いかけ、実際の受注につながる電話の最適化が壊れました。受注1件あたりの単価は、見かけの数字と裏腹に悪化しました。
いまは、成果に数えるのは電話のタップ1種類だけにしています。LINEやフォームは数字として見るだけで、Googleの最適化には使いません。「成果が増えた」と「受注が増えた」は別物です。
手順4:11月に再開する。立ち上げ方を変えた【新しいキャンペーン】
11月1日から、日予算4,000円の少額で再開しました。ここでも1つ、つまずきました。
初日、表示回数が0でした。診断画面には「広告ランクが低い」と出ていました。
原因は、新しいキャンペーンを最初から「問い合わせ数の最大化」で始めたことです。この設定は、過去の問い合わせデータを学習の材料にします。新しいキャンペーンには材料がないので、Googleが入札を弱め、そもそも表示されませんでした。
対応は、立ち上げの入札戦略を「クリック数の最大化(1クリック上限1,200円)」に変えることでした。7月に裏目に出た設定と同じ名前ですが、使いどころが違います。履歴がない立ち上げ期に、まず表示とクリックを作るために使い、問い合わせが20件ほどたまったら「問い合わせ数の最大化」に切り替えます。7月は、履歴があるアカウントの事故対応で使ったのが間違いでした。
つまずき早見表
| 起きたこと | 原因 | どうしたか |
|---|---|---|
| 獲得単価が約6倍に | 自動適用で広いキーワードが81件追加された | 自動適用を全オフ、追加分を変更履歴から取り消し |
| 止血後10日間、問い合わせが戻らない | 入札を「クリック数の最大化」に変えていた/主力キーワードを止めていた | 「問い合わせ数の最大化」に戻し、主力を少額で再開 |
| 成果は増えたのに受注が増えない | LINEのタップを成果に数えていた | 成果は電話のタップ1種類だけに |
| 再開初日、表示0 | 履歴のないキャンペーンで「問い合わせ数の最大化」を使った | 立ち上げは「クリック数の最大化+上限単価」、20件たまったら切り替え |
確認方法:今日、自分のアカウントで見る3つの設定

広告を代理店に任せている方も、ログインできるなら自分で見られます。
- 自動適用がオンになっていないか:左メニューの「最適化案」→右上の「自動適用」。オンの項目があれば、何がオンかを代理店に聞く。「キーワードの追加」がオンなら、要注意です。
- 成果(コンバージョン)に何を数えているか:「目標」→「コンバージョン」。電話・フォーム・LINEなど、受注につながる行動だけが数えられているかを見る。
- 入札戦略が何か:キャンペーンの「設定」→「入札」。「クリック数の最大化」のまま長く運用されていたら、問い合わせを見ていない可能性があります。
3つとも、画面を開いて読むだけです。変更は代理店と相談してからにしてください。
正直に書いておくこと
- 自動適用そのものが悪い機能ではありません。広告文の改善など、害の少ない項目もあります。ただ、キーワードの追加は広告費の使い道を直接変えるので、人が見てから反映すべきだと考えています。
- 7月の応急処置の判断は、こちらの誤りです。「無駄なクリックを減らす」つもりで選んだ設定が、逆の働きをしました。設定の名前と実際の挙動は違う、ということを身をもって学びました。
- 11月の再開は始まったばかりで、結果はまだ出ていません。問い合わせが20件たまって切り替えたあとの数字は、改めて書きます。
要点3行
- Google広告の「自動適用」は、人が確認せずにキーワードを足す。1日で81件増え、獲得単価が7,397円から41,578円になった
- 止血のあとの「クリック数の最大化」は、問い合わせを見ない設定。履歴のあるアカウントで使うと、安いクリックだけを買う
- 成果に数えるのは受注につながる行動だけ。LINEのタップを混ぜると、Googleはそちらばかり追いかける