ネットショップを始めて数か月、「注文は入っているのに、通帳を見ると思ったほど手元にお金が残っていない」——そう感じたことはないでしょうか。あるいは、売上は前月より伸びたのに、仕入れの支払いが重なって資金繰りが苦しくなった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
その原因は、「売れていないこと」だけとは限りません。多くの場合、決済手数料と入金サイクルという、EC特有の2つの仕組みが関係しています。どちらも地味なテーマですが、ここを理解しないまま規模を大きくすると、売上が伸びるほど資金が苦しくなるという逆転が起こりえます。
この記事では、Shopifyペイメントを例にしながら、ネットショップの手数料と入金の基本を、資金繰りの目線で整理します。専門的な会計知識は前提にしていませんので、これからECを始める方も、すでに運営中の方も、ご自身の店に当てはめながら読み進めてみてください。
「売上10万円」がそのまま手元に入るわけではない
まず押さえておきたいのは、お客様がカートで支払った金額と、事業者の口座に振り込まれる金額は同じではない、という点です。間にいくつかの手数料が挟まっています。
ネットショップにかかる主な費用の種類
- 決済手数料——クレジットカードやQRコード決済など、支払いを処理するためにかかる費用です。売上金額に対する料率で計算されるのが一般的で、EC運営でもっとも大きな変動費になりやすい項目です。
- プラン利用料・取引手数料——ショップを動かすための月額料金です。Shopifyのように、指定の決済サービスを使わない場合に別途「取引手数料」が上乗せされる仕組みを持つカートもあります。
- 振込手数料・入金にまつわる費用——売上金を口座に移すときの費用です。入金の回数が多いほど積み上がるため、頻度の設定によって年間の負担が変わることがあります。
- 返品・キャンセルに伴う費用——返金しても決済手数料が戻らないケースがあります。返品率の高い商材では、この点が利益に効いてきます。
これらを合わせると、売上のうち数パーセントは「入金される前に消える」ことになります。粗利率が薄い商材ほど、この数パーセントの差が最終的な利益を左右します。
料率は固定ではありません。公式情報での確認を
決済手数料の料率は、決済サービス・契約プラン・カードのブランド・海外発行カードかどうかなど、いくつもの条件で変わります。また、サービス側の判断で改定されることもあります。
ですので、記事や人づての情報で覚えた数字をそのまま前提にするのは避けてください。ご自身が契約している決済サービスの公式ページと管理画面で、いま適用されている料率を確認するのがもっとも確実です。とくに、上位プランに変更したときや、新しい決済手段を追加したときは、条件が変わっていないか見直しておくと安心です。
入金サイクル——「売れた日」と「お金が入る日」はズレる
手数料と並んでもう一つ重要なのが、売上が口座に入るまでの時間差です。実店舗の現金商売と違い、ECでは注文が入ってすぐに現金が手に入るわけではありません。
Shopifyペイメントの場合の考え方
Shopifyペイメントでは、注文が確定した売上がいったんプールされ、あらかじめ決められた周期で登録口座へ振り込まれます。この周期は管理画面から確認・設定でき、事業者の状況によって条件が異なります。加えて、サービスを使い始めた直後は、通常より入金までの日数が長めに設定されることがあります。
つまり、オープン直後にキャンペーンで在庫を大量に仕入れて売り切ったとしても、その代金が手元に届くのは少し先、という状況が起こりえます。開店時期の資金計画では、この点を織り込んでおくことが大切です。実際の日数や条件は管理画面の「決済」設定で確認できますので、開店前に一度目を通しておくことをおすすめします。
決済手段ごとに、ズレの大きさは違います
入金までの日数は、お客様がどの支払い方法を選ぶかによっても変わります。
- クレジットカード・QR決済——決済サービスの周期に従って入金されます。比較的サイクルが読みやすい手段です。
- コンビニ払い・銀行振込(前払い)——お客様が支払うまで売上が確定しません。入金忘れによるキャンセルも一定数発生します。
- 後払い(請求書払い)——お客様の支払い期限のあとに事業者へ入金されるため、時間差が大きくなりやすい手段です。
- 代金引換——配送業者を経由して入金されるため、配送完了からさらに間が空きます。
- モール(楽天・Amazonなど)での販売——モールごとに締め日と支払日が決まっており、自社ECとは別のサイクルで動きます。
複数の販路と決済手段を併用している場合、入金日がバラバラに存在することになります。「どの売上がいつ入るか」を一覧にしておくだけでも、資金繰りの見通しは格段に立てやすくなります。
時間差が資金繰りに与える影響を、数字で見てみる
具体例で考えてみましょう。ある月に、仕入れ代金として月初に50万円を支払い、その商品を月の後半に売り切って売上が100万円になったとします。数字の上では利益が出ています。
しかし、売上の入金が翌月にずれ込めば、その月のあいだは50万円が出ていったままの状態が続きます。ここに家賃や広告費、外注費の支払いが重なると、帳簿上は黒字なのに口座残高が足りない、という状況が生まれます。これがいわゆる「勘定合って銭足らず」の状態です。
やっかいなのは、この負担が売れば売るほど大きくなる点です。仕入れを増やせば先に出ていくお金も増え、入金待ちの金額も膨らみます。急成長しているショップほど運転資金の確保が課題になるのは、この構造によるものです。
ですから、セールや繁忙期の計画を立てるときは、売上目標と同時に「そのために先に出ていくお金はいくらか」「それが戻ってくるのはいつか」をセットで考えておく必要があります。
今日から見直せる4つのポイント
では、実際に何から手をつければよいのでしょうか。取り組みやすい順に4つ挙げます。
- 手数料の「実額」を毎月確認する——料率ではなく、先月いくら支払ったかを金額で把握します。決済サービスの管理画面から明細を取得できます。年間に直すと、想像より大きな金額になっていることが少なくありません。
- 商品ごとの粗利を、手数料込みで計算し直す——販売価格から仕入原価だけを引いて利益を考えていると、実態とズレます。決済手数料と送料、梱包資材まで含めて計算すると、「売れているのに儲かっていない商品」が見えてくることがあります。
- 入金予定をカレンダーに落とす——販路・決済手段ごとの入金日を書き出し、支払いの予定と並べます。資金が薄くなる週が事前に分かれば、仕入れ時期の調整で対応できます。
- 入金サイクルの設定を確認する——決済サービスによっては入金頻度を選べる場合があります。頻度と振込手数料のバランスを見て、自店に合う設定になっているか確認しておきましょう。
これらは会計ソフトと連携させると、毎月の集計作業をかなり省けます。ソフト選びについてはfreeeとマネーフォワードどちらを選ぶ?もあわせてご覧ください。なお、税務上の取り扱いについては顧問税理士にご確認ください。この記事は資金繰りの見通しを立てる目的で書いています。
これから始める方が、開店前に決めておきたいこと
これからネットショップを始める方は、デザインや商品写真と同じくらい、次の3点を開店前に決めておくことをおすすめします。
- どの決済手段を用意するか——選択肢が多いほど購入されやすくなる一方、手数料と入金サイクルは複雑になります。まずは主要な手段から始め、様子を見て追加する進め方が現実的です。
- 初回入金までの運転資金をどう確保するか——開店から最初の入金までは、支出だけが先行する期間になります。ここを見誤ると、売れているのに続けられない状況になりかねません。
- 初期費用と月額費用の全体像——制作費だけでなく、ランニングでかかる費用も含めて把握しておきます。目安はShopify構築の費用相場で整理していますので、参考にしてください。
また、開店後によくあるつまずきはShopify運営でよくある失敗5選にまとめています。手数料や資金繰り以外の落とし穴も、あわせて確認しておくと安心です。
まとめ:手数料と入金日は「知っていれば守れる」領域
決済手数料も入金サイクルも、事業者側で自由に決められるものではありません。ですが、仕組みを知っていれば、計画の立て方で影響を小さくできる種類の課題です。売上が伸びてから慌てるより、いまのうちに数字を並べておくほうが、はるかに負担は軽くて済みます。
まずは今月、決済サービスの管理画面を開いて、先月支払った手数料の実額と、次の入金予定日を確認してみてください。その2つの数字が分かるだけで、来月の判断はぐっとしやすくなります。
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