導入
来週、小売店を営む方が事務所に来られます。ご相談の内容は3つ。ホームページの料金、補助金が使えるか、事業計画書をどう書くか。来年から別の市で新しい事業も始めたいそうです。
「ホームページに補助金を使いたい」という相談は、制作会社をやっていると何度も受けます。世の中の記事には「ホームページ制作に使える補助金」が並んでいますし、実際に使える制度もあります。ただ、面談の前に公募要領(国が出している、申請のルールを全部書いた文書)を2本通して読んだら、お客様に最初に伝えるべきことは「使えるかどうか」ではなく「いつ作り始められるか」でした。
結論を先に書きます。いちばん現実的な制度(小規模事業者持続化補助金)を今回の募集で使う場合、ホームページを作り始められるのは早くて2027年4〜5月です。補助金が出るのはホームページ代のうち最大30万円で、しかもホームページだけでは申請できません。この3点を知らずに面談に入ると、「じゃあ補助金で」と話が進んだあとで半年止まります。
この記事は、公募要領のどこにそれが書いてあるかと、それを踏まえてお客様にどう聞くことにしたかの記録です。
きっかけ
相談の連絡はこうでした。「ホームページを作りたい。補助金が使えるなら使いたい。事業計画書も相談したい」。
ホームページの料金はすぐ答えられます。当社の料金はサイトに公開していて、ホームページは20万円からです。問題は補助金のほうでした。自分の中にも「ホームページなら持続化補助金」という知識はあります。ただ、お客様に「使えますよ」と言うなら、今回の募集の締切と条件を自分の目で確かめてからにしたい。前に別の案件で、二次情報(誰かがまとめた記事)を信じて書いた数字が古くて、恥をかいたことがあるからです。
それで、面談の1週間前に公募要領を読むことにしました。一般型が44ページ、新しく創業した人向けの創業型が37ページです。
最初に:登場する制度と窓口を整理
ホームページに関係する補助金の話で、読者の方が迷うのは「どの制度の、どの回の話をしているか」です。今回の相談で見たのは次の3つでした。
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型〉。従業員5人以下の商業・サービス業(製造業などは20人以下)が対象です。販路開拓、つまり売上を増やすための取り組みに使えます。ホームページはここに入ります。
- 同じ補助金の〈創業型〉。創業から1年以内の方が対象で、上限が一般型より大きいです。
- 市の創業支援の補助金。事務所や店舗の家賃が対象で、ホームページ代は対象外でした。
申請の窓口は、お店の所在地を管轄する商工会議所(または商工会)です。制作会社ではありません。ここは後で効いてきます。
覚える言葉は3つだけ
- 公募要領。申請のルールを全部書いた文書です。補助金のサイトからPDFで読めます。まとめ記事ではなく、これが正本です。
- 採択。申請した計画が「補助の対象として選ばれた」という発表です。この時点ではまだお金は出ません。
- 交付決定。採択のあと、見積書などを出して「この金額で補助します」と正式に決まることです。ホームページの発注は、この日より後でないと補助の対象になりません。
公募要領で分かったこと
1. 作り始められるのは、早くて来年の4〜5月
今回(第20回)の日程は公募要領に次のとおり書いてあります。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 申請受付 | 2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00 |
| 商工会議所が出す書類(様式4)の発行受付締切 | 2026年12月4日(金) |
| 採択発表 | 2027年3月頃(予定) |
| 交付決定 | 採択発表から概ね1〜2か月(公募要領の注記) |
そして、交付決定より前に発注・契約・購入・支払いをしたものは補助の対象外、と明記されています。前払いも含みます。

つまり、11月に相談を受けて12月に申請しても、ホームページの制作を発注できるのは2027年4〜5月です。そこから制作に6週間ほどかかりますから、公開は初夏になります。お客様が「来年の春に新しい事業を始めるので、それまでにホームページが欲しい」と考えているなら、補助金とは日程が合いません。
2. 補助金が出るのは、ホームページ代のうち最大30万円
補助率は3分の2、上限は50万円(条件により上乗せあり)です。ここまでは多くの記事に書いてあります。
公募要領には、経費の種類ごとに追加のルールがあります。ホームページは「ウェブサイト関連費」という区分で、この区分だけでは申請できず、補助金の申請額は30万円(税込)が上限です。
3分の2で30万円ということは、ホームページ代が45万円(税込)のときに補助が30万円、自己負担が15万円です。ホームページ代が60万円でも補助は30万円のままで、自己負担が30万円になります。「上限50万円」の数字だけ見て「50万円のホームページを作れば自己負担は17万円」と計算すると、ずれます。

3. ホームページだけでは申請できない
同じ場所に「ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください」とあります。
ほかの経費とは、チラシ・看板・DM・インターネット広告(広報費)や、展示会の出展費などです。なお広報費にも同じく「単独では申請不可・上限30万円」の制限があります。実務としては「ホームページ+チラシ」「ホームページ+看板」のように、ホームページを売上につなげる計画全体で申請することになります。
逆に言えば、「開店に合わせてホームページと看板とチラシを揃えたい」という方には、この補助金はきれいに合います。
4. 商工会議所に行く締切は、申請締切より11日早い
申請には、商工会議所が発行する「事業支援計画書(様式4)」が要ります。この発行受付の締切が12月4日で、申請締切の12月15日より11日早い。しかも「受付締切以降の発行依頼は、いかなる理由があってもできません」と書かれています。
発行は、商工会議所の経営指導員と計画の中身を詰めてから出るものです。締切の前日に初めて窓口に行って、その場で発行してもらえる書類ではありません。11月上旬に相談を受けた場合、今回の募集に間に合わせるのは日程的に厳しい、というのが読んだ上での判断でした。
5. 新しい事業には〈創業型〉があるが、順番がある
来年から別の事業を始める、という話があったので創業型も読みました。上限は200万円と大きいです。ただ要件が厳しく、「市が認定した創業支援(セミナーや相談)を受けた日」と「開業日(法人は設立日)」の両方が、公募締切から過去1年の間にあることが必要です。
来年開業するなら、今回の募集では申請できません。狙うなら「先に市の創業支援を受ける → 新しい事業を新規開業(または新しい法人)として立ち上げる → その後の募集で申請する」の順番になります。すでにある個人事業に屋号を1つ足すだけでは「開業日」が新しく立たない可能性が高く、ここは商工会議所に確認してから答える、と決めました。
読んだ結果、面談でこう聞くことにした

公募要領を読む前は「補助金、使えますよ」と答えるつもりでした。読んだ後は、最初に日程を聞くことに変えました。お客様に選んでもらうのは次の2つです。
- ホームページが今すぐ欲しい:補助金は使わず、このまま進める。公開は年内から年明け。
- 半年待てる:今回か次回の募集に申請し、交付決定(来年4〜5月以降)を待ってから発注する。ホームページだけでなく、チラシや看板と一緒に計画する。
どちらを選ぶかは、お客様の事業の都合で決まります。当社が決めることではありません。制作会社の役割は、2つの道の日程と自己負担額を正直に並べることと、申請書の「販促・集客」の欄に入れる数字(ホームページ・地図検索・LINEの費用と見込み)を出すことだと整理しました。申請書そのものは、商工会議所の経営指導員と無料で作れます。当社は代筆も申請代行もしません。
つまずき早見表
| 起きること | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 「補助金で作る」と決めたあとに半年止まる | 交付決定前の発注が対象外 | 最初に「今すぐ」か「待てる」かを決める |
| 自己負担が思ったより多い | ウェブサイト関連費の補助は上限30万円 | 45万円を超える分は全額自己負担と伝える |
| 申請が受理されない | ホームページだけの申請は不可 | チラシ・看板・DMなどと組む |
| 商工会議所で書類が出ない | 様式4の発行締切は申請締切の11日前 | 相談は募集開始の直後に行く |
| 創業型が使えない | 創業支援を受けた日と開業日の両方が1年以内 | 先に市の創業支援を受け、新規開業の形にする |
| 公開が間に合わず対象外になる | 補助事業期間内に運用に至らないホームページは対象外 | 第20回は2028年3月31日までに公開と支払いを終える |
確認方法
自分の案件で同じことを確かめるには、公募要領の次の場所を見てください。回が変わると日付も条件も変わるので、必ず自分が申請する回のものを開きます。
- 冒頭の「公募スケジュール」:受付開始・締切・様式4の締切・採択発表の時期。
- 「補助率、補助上限額等」:3分の2と上限50万円、上乗せの条件。
- 「補助対象経費」の「ウェブサイト関連費」:単独申請不可と、上限30万円(税込)。
- 「補助対象外」の一覧:交付決定前の発注・契約・支払いが対象外であること。
- 末尾の表「補助事業実施期間」:いつまでに終わらせるか。
PDFの中を「ウェブサイト関連費」で検索すれば、該当箇所は2分で見つかります。
正直に書いておくこと
- この記事は2026年11月5日に始まった第20回の公募要領(第7版)を読んだものです。次の回では条件が変わる可能性があります。
- 採択されるかどうかは、当社には分かりませんし、保証もできません。申請の可否は商工会議所の判断です。
- 公募要領には、ホームページに関するコンサルティング費用や、すでに使っているソフトの更新料は対象外とも書かれています。公開後の毎月の運用サポート費も対象になりません。
- 50万円(税抜)以上で作ったホームページは「処分制限財産」になり、原則5年間、勝手に譲渡や廃棄ができません。普通に運用する分には影響しませんが、知らずに契約すると驚きます。
- 面談はこれからです。お客様がどちらを選ばれたか、創業型の「開業日」の扱いを商工会議所がどう答えたかは、分かり次第この記事に追記します。
要点3行
- 持続化補助金でホームページを作る場合、発注できるのは交付決定の後。今回の募集なら2027年4〜5月以降です。
- 補助はホームページ代のうち最大30万円で、ホームページだけでは申請できません。チラシや看板と組みます。
- 制作会社に聞かれたら、「使えるか」より先に「今すぐ欲しいか、半年待てるか」を答えると話が早いです。
ホームページ制作のご相談は、補助金の有無にかかわらず無料で受けています。枚方市・交野市のホームページ制作についてはこちらをご覧ください。