導入
児童施設を運営するある法人で、職員の勤務や日々の記録を管理する仕組みを作りました。最初はkintoneで組み、完成まで3ヶ月かかりました。その後、AIに設計と組み立てを手伝わせながらNotionに載せ替えたところ、2週間で動くものになりました。
3ヶ月と2週間。同じ法人の、ほぼ同じ業務です。差がついた理由は道具の性能ではありません。「何から作るか」と「誰が組むか」でした。この記事では、その経験をもとに、小さな会社がNotionで業務管理を始めるときの手順を、最初の1ヶ月で回せる範囲に絞って書きます。作るデータベースは3つだけです。
きっかけ
その法人では、職員25名分の勤務と、園での日々の記録を、紙と表計算とチャットに分けて管理していました。まずkintoneで一本化しようとしました。
kintoneは「アプリ」という単位で台帳を作る道具です。職員台帳、勤務パターン、日々の記録。順に作っていくうちに項目の追加と画面の調整が続き、気づけば3ヶ月が経っていました。動いてはいます。ただ、画面がいかにも「業務システム」で、現場の人が毎日開く気になれませんでした。使われないものは定着しません。3ヶ月かけたものが、そこで止まりました。
そこで、Notionに切り替える判断をしました。Notionは、文書とデータベースを同じ画面で扱える道具で、見た目がメモ帳に近く、現場の人が構えずに開けます。変えたのは道具だけではありません。設計をAIに相談しながら進め、データベースの項目とつなぎ方を先に決めてから組みました。その結果、職員台帳、勤務パターン(4種類)、月ごとの集計までを2週間で載せ替えられました。
最初に、作業する場所を整理します
この記事で触る場所は2つです。
- Notion(ブラウザまたはアプリ)。データベースを作る場所です。
- 既存の台帳(表計算やkintone)。移す元のデータを見る場所です。
移行の作業中は、この2つを行き来します。「いまどちらを見ているか」を意識するだけで、入力先の間違いが減ります。
用語は3つだけ
- データベース。Notionの中の「表」です。1行が1件、列が項目です。
- リレーション。表と表をつなぐ列です。案件の行に「どの顧客の案件か」を持たせるときに使います。
- ビュー。同じ表を、並べ替えや絞り込みを変えて見る画面です。表は1つでも、見え方は何通りも作れます。
手順0:いま何を管理しているかを書き出す
【どこで作業するか】紙かメモ帳
Notionを開く前に、いま管理しているものを全部書き出します。顧客の台帳、見積、作業の予定、勤務、請求。全部です。 そのうえで「最初の1ヶ月は3つだけにする」と決めます。全部を一度に作ろうとすると、完成する前に現場が離れます。書き出すのは捨てるためです。
手順1:3つのデータベースを作る
【どこで作業するか】Notionの新しいページ
作るのは顧客、案件、タスクの3つです。項目は次の通りで、これ以上増やしません。
| データベース | 項目 |
|---|---|
| 顧客 | 会社名、担当者、連絡先、区分(既存・見込み・休眠)、メモ、最終接触日 |
| 案件 | 案件名、顧客(リレーション)、状態(提案中・進行中・完了・失注)、金額、納期、担当、メモ |
| タスク | タスク、案件(リレーション)、状態(未着手・進行中・完了)、担当、期限、メモ |
細かいところでは、担当はNotionに登録した人から選ぶ形式にし、金額は円表示にしてあります。文字で入れるとあとで集計できなくなるためです。
ここまでを空の状態で用意したテンプレートがあります。複製すればそのまま自分のワークスペースに入り、30分あれば動き出せる分量です。X(@yu_medirection)の投稿からLINEで受け取れます。

手順2:つなぎ方を先に決める
【どこで作業するか】Notionの案件データベース
案件には「顧客」の列を、タスクには「案件」の列をリレーションで作ります。向きは「下から上」です。タスクは案件に、案件は顧客にぶら下がります。
ここで知っておくと得なのは、つなぎは片方だけ作れば両方に列ができることです。案件に「顧客」の列を作ると、顧客の側にも「案件」の列が自動でできます。顧客を開けば、その会社の案件が並んで見えるということです。両側に作る必要はありません。作ってしまうと、同じつながりが二重になります。
ここで決めておくべきなのは、入力する人の画面です。経営者が見たいのは顧客ごとの一覧ですが、現場が入力するのはタスク1件ずつです。入力する側の画面を先に作らないと、あとで表を組み替えることになります。Notion版で2週間で済んだのは、この順番を最初に決めたからです。
手順3:5社だけ入れて回す
【どこで作業するか】Notionの顧客データベース
顧客を5社だけ入れ、その5社の案件とタスクを入れます。全件入れるのは、1週間回してからです。 5社で回すと、項目の過不足が見えます。足りない項目は困ってから足す。余った項目は消す。この1週間で、表の形はほぼ決まります。
手順4:既存の台帳から移す
【どこで作業するか】既存の台帳とNotion
表計算からの移行は、表を1行ずつ文字だけにしたファイル(CSVと呼びます)に書き出して、Notionに読み込みます。ここまでは速いです。時間がかかるのは、そのあとです。
読み込んだ直後の案件には、顧客がつながっていません。CSVは文字しか運ばないので、表と表のつながりまでは復元されないのです。案件の行を開き、顧客を選ぶ。この作業が件数分だけ発生します。
kintoneからの移行では、このつなぎ直しが一番の手間でした。人手で確認する前提で、時間を見ておいてください。
つまずき早見表
| 起きること | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 現場が入力しなくなる | 画面が「システム」すぎる、項目が多い | 項目を減らす。状態は3つまで。開く画面はタスク一覧だけにする |
| 一覧が見づらい | 表を増やして解決しようとしている | 表は増やさず、ビューを増やす |
| 読み込んだ案件に顧客が付いていない | CSVはリレーションを復元しない | 読み込み後に案件を開いて顧客を選ぶ |
| 同じ顧客が2件できる | 表記ゆれ(株式会社の有無など) | 会社名の表記を最初に決める |
| 作り直したくなる | 経営者の一覧を先に作った | 入力する人の画面から作り直す |
確認方法
1週間回したあと、次の3つを見ます。
- タスクの「状態」が更新されているか。更新されていなければ、項目が多すぎます。
- 案件の「顧客」が全件埋まっているか。空きがあれば、つなぎ直しの漏れです。
- 経営者が顧客の一覧を開いて、案件と次のタスクが読めるか。読めれば、3つのつなぎ方は合っています。
正直に書いておくこと
- Notionにすれば速くなる、という話ではありません。kintoneで3ヶ月かかった最大の原因は、道具ではなく作り方でした。同じ作り方をすればNotionでも時間はかかります。
- 2週間で載せ替えられたのは、kintoneで3ヶ月悩んだ蓄積があったからでもあります。一からなら、もう少しかかったはずです。
- 職員25名規模、勤務パターン4種類の法人での話です。もっと大きな組織や、請求や在庫まで含む業務では、3つのデータベースでは足りません。
- Notionは共同編集の権限が粗い場面があります。職員ごとに見せる範囲を細かく分けたい場合は、別の仕組みと組み合わせています。
要点3行
- 最初に作るデータベースは顧客・案件・タスクの3つだけ。項目は増やさない。
- 入力する人の画面から作る。経営者の一覧はビューで後から作れる。
- 5社だけ入れて1週間回してから、全件を移す。
業務改善の無料ヒアリング(1時間・1回)を受け付けています。詳しくは公式LINEから。